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総務省|女性看護師の就業意識に関する実証分析

○はじめに
看護職員不足の問題が注目される中で、看護職員の定着が日本だけでなく国際的な課題となっています。そこで、「就業構造基本調査」(総務省統計局)を利用し、全国の女性看護師の就業意識について分析・検討することにしました。

 

○分析対象データと分析方法
●分析対象データ
総務省統計局「就業構造基本調査」(以下「就調」と記す)の2002年調査と2007年調査の個票データを利用しました。
「就調」では就業意識について、「あなたはこの仕事(現在の仕事)を続けますか」という質問項目で調査されています。これに対して、以下の4つの選択肢から回答する形式となっています。
@この仕事を続けたい(継続希望)
Aこの仕事のほかに別の仕事もしたい(追加希望)
Bほかの仕事に変わりたい(転職希望)
C仕事をすっかりやめてしまいたい(休止希望)
●分析方法
就業中の職場に対しての就業意識の要因を見つけるため、回帰分析を行いました。(被説明変数は各意識の有無に関する変数、説明変数は個人や世帯属性、労働環境などの諸要因とします。)さらに「正規又は非正規」という雇用形態と「40歳未満か否か」の年齢層の基準で分けて、これらを交差させた4つのグループに分割して分析しました。また、今回は64歳以下という条件を設け、看護師と全職種のサンプル結果を比較することにしました。

 

○分析結果と考察
●就業意識の概況
看護師と看護師以外の全職種について統計学を用いて比べてみると、就業形態に関係なく看護師で仕事を継続したいと思う人の割合は有意に高く、これに対応するように転職希望を持つ人の割合は優位に低くなりました。しかし、専門職の中では仕事をやめたい人の割合が高く、看護師は何らかの問題を抱えている可能性は否めません。
2002年?2007年にかけての変化をみてみると、転職希望の割合にはプラス、継続希望の割合にはマイナスの変化が、正規雇用者を中心にみられました。これは2006年の診療報酬改定が関係していると考えられます。
●就業意識に関する回帰分析
諸要因を大きく分けたグループ別の主な結果は次の通りです。
@個人属性
大卒未満と大卒以上の学歴で比較した場合、看護師に関しては有意な差は確認されませんでしたが、全職種でみた場合は、大卒以上であることが転職志向となる傾向が確認できました。これは看護師の場合は必須である資格の方が、学歴より重視されるからと推測できます。また、転職経験があると転職希望が高くなる傾向が全職種にみられました。
A世帯属性
世間一般で出産期と考えられる若年層看護師だけでみると、就学前の子どもの有無による就業意識への影響は概ねみられませんでした。全職種でみると継続希望がみられるため、看護師は育児による就業意識への影響はあまりないと考えられます。
B労働環境
年間の就業日数の影響をみると、40歳以上の正規雇用看護師だけで転職希望が強くなることが確認された以外は、効果が確認されませんでした。これは看護師の激務により、体力的な問題が生じるものと推測されます。
週間就業時間が長い場合は、職種を問わず転職志向につながりやすくなることもわかりました。
C企業規模属性
国公立機関を基準とした比較ですが、若年層正規看護師だけが民間の職場への定着志向が強いようです。
全職種での傾向は、特に若年層正規雇用者に就業意識の差がみられ、民間は離職志向が強まる傾向にありました。
Dその他の属性
職種を問わず若年層は職場への定着志向が弱いという世代的な効果の可能性、他と比べた時の看護師の就業意識の高さ、看護師のベテラン層は体力的なものからか休止希望の傾向が強いことなどもわかりました。

 

○まとめ
女性看護師の就業継続希望・転職希望・休止希望という3つの意識に関して、どのような要因が効果を持つのか分析しました。
その結果、看護師だけでなく雇用されている女性はそれまでの転職経験で再転職希望が強くなる傾向にあり、初職とのマッチングは職場定着の重要な要素と言えます。
出産ではなく結婚を機に安定的な就業志向は弱まり、看護師の結婚は雇用形態を正規から非正規へと転換させるきっかけにもなりやすいようです。
正規雇用看護師を中心に、配偶者や子どもなどの家族の多さは職場への定着志向に影響を及ぼすため、家族による協力は就業継続に重要な要素であることがわかります。
労働時間の長さは若年層の正規雇用看護師を中心に転職志向を強める効果を持ちました。ただし、賃金の高さによって継続志向に変化がみられたのは、看護師のベテラン層だけでした。
2006年の診療報酬改定をきっかけにさらに良い条件の病院への転職を希望する人が増え、転職志向の高まりにつながったと考えられます。さらに、看護師は全体的に就業への意志が強い職種ですが、他職種と比較してもベテラン層や正規雇用者の仕事をやめようとする意識が強いことも明らかになりました。
労働時間の長さや家族からのサポートの有無は就業継続の問題点になりやすく、全職種でも重要な問題になっています。これらの問題や労働環境の改善など、今後どう解消していくかがこれからの課題でもあります。

 

女性看護師の就業意識に関する実証分析
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsha/49/3/49_147/_pdf