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文部科学省|文部科学省における看護学教育に関する検討の経緯

昭和49年に行われた「医科大学等設置調査会看護学部部会」に始まり、40年以上の歳月をかけて、看護基礎教育の向上を目指して看護教育に関する検討が行われてきました。
変わりゆく時代に合わせて、看護教育も常に変化と改革を重ねてきたのです。
その概要をみてみましょう。

 

○看護教育に関する沿革
昭和49年の「医科大学等設置調査会看護学部部会」では、看護学部を設置する必要性やその形態について検討しました。
「教員等指導者層を確保するために、看護大学(看護学部)の設置を急ぐ必要性」や、「従来の看護教育の在り方を再検討して、国家試験受験資格要件を満たすことを可能とすること」などが提言されました。

 

平成7年の「大学・短期大学における看護教育の改善に関する調査研究協力者会議」では、看護系大学・短期大学に適用される保健婦助産婦看護婦学校養成所指定規則(以下、指定規則)の弾力化について検討しました。
大学・短期大学の発展にふさわしい規定をつくることや、授業科目等に関する個別かつ詳細な規定の簡素化を図ることなどが提言されました。

 

平成16年の「看護教育の在り方に関する検討会」では、学士課程の教育課程について、看護実践能力の卒業時到達目標を示しました。
また、到達目標の設定にあたり教育課程の特色を、「保健師・助産師・看護師に共通した看護学の基礎を教授する課程」であることはもちろん、大学教育本来の特質である「教養教育が基盤に位置づけられた課程」であるべきだと整理しました。

 

平成19年の「大学・短期大学における看護学教育の充実に関する調査協力者会議」では、指定規則改正案を看護系大学等へ適用する場合の課題等について検討を行い、以下の2つの提案を行いました。

 

@侵襲的措置とそれに伴うケアについては、免許取得前の臨地実習で取得すべきものと、卒後の研修の中で取得することがふさわしいものとの峻別が必要である

 

A将来的には、看護系大学等の教員が中心となって、指定規則の趣旨を上回る教育の質の保証体制の在り方を主体的に研究していくことが望まれる

 

平成23年の「大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会」では、看護系大学の人材養成の在り方及び学士課程で学生が身につけるべき能力について検討し、以下の2つの提案がされました。

 

@保健師養成を各大学が自身の教育理念・目標や社会のニーズに基づき、選択可能とする
A「学士課程においてコアとなる看護実践能力と卒業時到達目標」(以下、到達目標)

 

平成27?29年度の「大学における医療人養成の在り方に関する調査研究委託事業」では、平成23年の検討会で挙げられた到達目標についての調査・分析を実施しました。
到達目標は看護実践に必要な5つの能力群と、それらの能力群を構成する20の看護実践能力などで構成されています。

 

〈5つの群と20の看護実践能力の一覧〉
@ヒューマンケアの基本に関する実践能力
1)看護の対象となる人々の尊厳と権利を擁護する能力
2)実施する看護について説明し同意を得る能力
3)援助的関係を形成する能力

 

A根拠に基づき看護を計画的に実践する能力
4)根拠に基づいた看護を実践する能力
5)計画的に看護を実践する能力
6)健康レベルを成長発達に応じて査定する能力
7)個人と家族の生活を査定する能力
8)地域の特性と健康課題を査定する能力
9)看護援助技術を適切に実施する能力

 

B特定の健康課題に対応する実践能力
10)健康の保持増進と疾病を予防する能力
11)急激な健康破綻と回復過程にある人々を援助する能力
12)慢性疾患及び慢性的な健康課題を有する人々を援助する能力
13)終末期にある人々を援助する能力

 

Cケア環境とチーム体制整備に関する実践能力
14)保健医療福祉における看護活動と看護ケアの質を改善する能力
15)地域ケアの構築と看護機能の充実を図る能力
16)安全なケア環境を提供する能力
17)保険医療福祉における協働と連携をする能力
18)社会の動向を踏まえて看護を創造するための基礎となる能力

 

D専門職者として研鑽し続ける基本能力
19)生涯にわたり継続して専門的能力を向上させる能力
20)看護専門職としての価値と専門性を発展させる能力

 

○全国調査の結果
上記に基づいた全国調査を平成27年4月1日現在の248看護系大学を対象に、千葉大学に委託して行いました。
看護系大学の増加及び教育環境の変化や地域包括ケアの推進、病床機能再編等の医療提供体制の変革に伴う看護師等の役割・機能の変化の予測がその背景にあります。

 

調査方法として、管理責任者1名と、1?4名の科目責任者に対して調査票を配布し、個別に返送を依頼しました。
結果、管理責任者248名中72名(29%)、科目責任者992名中250名(25.2%)の有効回答数が認められました。

 

そのうち7割以上が到達目標を活用していると答え、活用している教員の8割以上はカリキュラム検討や内容の網羅性の確認に活用し、各大学のディプロマポリシーやカリキュラムポリシーに反映されていました。

 

つまり、看護学教育モデル・コア・カリキュラムの基本的な考え方については、一定の理解と支持が得られるものと考えられます。
と同時に、課題や改善の余地も認めらました。
具体的には「社会の変化に伴う教育内容の見直し」や、「提示のタイミング」、「具体的な教育方法、レベル解釈や基準についてどこまで提示するか」などです。

 

○日本看護系大学協議会における実態調査
さらに、日本看護系大学協議会に委託し、「学士課程の実習環境に関する調査・研究」を行い、新たな臨地実習の在り方について、看護系大学学士課程教育における臨地実習に関わる実態調査を実施しました。

 

実施の背景として、看護教育の質の保証への関心や、実習施設・看護技術実施の機会の減少、医療提供体制の変化などがあります。看護学実習の在り方の見直しが迫られている中で、現状と課題点を明確にするために行われたのです。
・調査方法
調査は2通りで、1つ目はシラバス調査です。全実習科目のシラバス(平成27年度分)と教育課程表、成人看護学系の実施要項を対象に、科目構成や時間数、教育目標、実習内容と方法、評価方法などを調査しました。
協力が得られたのは197校(79.8%)です。

 

2つ目はWebによるアンケート調査です。大学の基礎情報をはじめ、看護学実習の指導体制や実習内容、学生の取り組み状況、実習施設についてなどを対象に、看護師・助産師・保健師に関わる全ての実習を調査しました。協力が得られたのは169校(68.1%)です。

 

結果を見てみると、約7割の大学が指定規則の枠組みに準じていることがわかりました。また、実習教育では主体的・自立的な人材育成を目指し、様々な工夫をしていました。

 

しかし、実習総単位数は23?65単位と大きな幅があることや、実習施設や実習対象者の確保が難しい現実も浮き彫りになりました。また、指導教員不足や多忙による疲労も問題点として挙げられます。

 

○まとめ
これからの看護系大学における看護学教育カリキュラムについて、今まで通りでは実習施設や対象者の確保に限界があり、カリキュラム構造の抜本的な見直しが必要となります。また、医療提供体制が在宅医療などを含む地域完結型へと仕組みが変わるのに合わせることを考慮しても、新たなカリキュラム構造の構築やそれに伴う実習の在り方が必要です。
さらに看護教員のカリキュラム開発に関する能力の向上や、教育力向上のための大学院教育、FDプログラムが必要となります。

 

文部科学省における看護学教育に関する検討の経緯
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/078/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2016/11/15/1379378_03.pdf